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短編<十亀>

▼夢主について(必読ではありません)

高2の女の子。

 

  • ボディーガード

      電話をかける声が弱々しく、震えていた。「有馬くん、屋上なの。条くんが…… 」 その原因が自分だということはわかる。曇り空ばかり映すあお向けの視界はなぜか歪んで、目薬をさした後に無理やり目を開けたときのよう。皮膚は熱くて肉が寒い…

  • 嬉しい

      ここまでのあらすじ 四人でスイーツ満喫中に唐突に離脱した兎耳山丁子 (三週間ぶり三度目)。今回は桜が追いかけていった。 あらすじおわり 「ここで待ってろ、すぐ連れてくる」 半ば言い捨ててベンチを後にするのを、はいきな…

  • 縛る

      初めてちゃんを抱きしめたときは、びっくりしすぎるあまり声を上げてしまいそうになった。 自分で触れる自分の腕は、骨だの肉だので硬い。だから人体はこんなものだと思っていた。それなのにとっさに抱き留めた彼女は何かの間違いかと思うくら…

  • 空模様

      目を閉じていてもわかった。トタンを叩く複数のシューズの足音が近づいてくる。ひとりくらいは、おしゃれに革靴かもしれない。ともかく、ざりざりと屋根の上に積もった砂埃を踏みしめる響きが背中に伝ってくる。抑えているつもりでも隠し切れな…

  • ハレーション

      このごろはオリの屋上で昼寝をすると、いつの間にか周りに三人が集まってきている。仰向けのちょーじはすぐそばで大の字になって、片方の手の甲を俺の腹に投げ出し。その奥のフェンスに寄りかかってこくりこくりと船を漕いでいるのは、遊びに来…

  • エンドルフィン

     ※開幕暴言モブ注意  ここまでのあらすじ「こんなやつにオレたちが負けるわけねー! 好きな子に手も足も出ない年中デレまくりの浮かれ野郎! 行くぞー!」 あらすじおわり 「何も言い返せなかったなぁ」「というか亀ち…

  • 何度でも

      いっぱいに腕を伸ばして、回りきらない手は背中へ。条くんを真正面から抱きしめようとすると、どうしてもそんなふうになった。いっしょに買いに行ったおやつたちは条くんの部屋の机に置いてけぼり。彼らを食べることも楽しみだけど、この体温は…

  •   勢いだけのあいつ。大声だけのあいつ。とにかく数だけのあいつら。こちらがひとりきりだったなら何とか全員黙らせることができただろう。けれど今日はふたりだ。 ずっと待ち望んでいた、ふたりきり。「ちゃん、こっち」 仕込み中の札がかかっ…

  • とどめを刺す

      ここまでのあらすじ「バブみこそ癒し!」「塩対応が至高!」 あらすじおわり 「何やらエキサイトしてる……」「どんな相手がタイプかって話らしいよぉ」 獅子頭連も防風鈴もごちゃ混ぜの討論会は広場のあちこちで異様な盛り上がり…

  • ヒヤリハット

      単なるジェスチャーだった。今日の授業のことを話してくれるちゃんが空へ両手を伸ばして、白い指先が白い雲を示した瞬間。「それでね、こう……あっちゃんがスリーポイントシュートでね」 ふむふむと頷きながら目で追う先には丸い輪郭、なめら…

  • 誘拐

      ここまでのあらすじ「こっち来てくれ! 十亀さん落ち込んでるんだ!」 あらすじおわり  改札を出た直後に男の子たちに連れられた先では、確かに十亀くんが駅前のベンチに落ち着いていた。数人がそれとなく遠巻きにしているその姿…

  • 裏切り者

      倉庫のドアを破ることより、わたしの説得を優先する焦りを感じる打音だった。がんがんと金属を殴りつける耳障りなそれの合間に、外の彼の声がかろうじて届いて。「あんただまされてんだ、だから俺と来いよ」 一見普通の、私服の男の子だった。…

  • 繰り返す

      ふたりの会話は聞いていて楽しかったり落ち着かなかったりする。話題の大半がひとりの男についてに偏っていくから。ともあれちゃんの今日の帰り道はそうやって賑やかだ。駅からの徒歩数分が信じられないくらいに早く過ぎていく。「そこで亀ちゃ…

  •   一度、十亀くんの髪をなでさせてもらったことがある。ふわふわで気持ちよくて、うなじのところはさっぱりして。癒しの手触りがなんだかクセになって続けていると「ちゃんくすぐったい」とこちらも気持ちよさそうにして。 そんな彼が、少し前ま…

  • 拘束

      片腕でも事足りるくらい小さいくせに背中はがら空き、油断も隙もあり余っている。スマホを鞄に片づけているところへ静かに両腕を回せば、簡単に彼女を縛りつけられた。びっくりしてひっくり返った悲鳴を上げてももう遅い。「捕まえたぁ」 これ…

  • 逆光

     「それがお願い?」 あまりに深刻な顔をするから、それなりに深刻な何かだと思っていたぶん拍子抜け。いい意味で。そうして小さな「お願い」のとおりに屈むと、彼女の緊張が少し和らぐのがわかった。真昼の光の下で、なおさら。「ありがとう。十…