「それがお願い?」
あまりに深刻な顔をするから、それなりに深刻な何かだと思っていたぶん拍子抜け。いい意味で。そうして小さな「お願い」のとおりに屈むと、彼女の緊張が少し和らぐのがわかった。真昼の光の下で、なおさら。
「ありがとう。十亀くんおっきいから」
「ないしょ話? 何かなぁ」
公園の真ん中で広がる喧騒を背に、ほころぶ唇をそうっと覆うのは柔らかい線の指。明るさでじわじわと溜まっていたダメージをごまかそうと目を閉じ、ささやく声を待った。ふたりきりの遊びのお誘いだろうか。
「条くん」
――嬉しい想像の真裏からやってきたことば、それが何だったのか思い出すまでに数秒かかり。
その間に、頬に押し当てられて離れていったもの。
「……おしまい。これだけ」
忍び笑いを聞けば温かなそれの正体はすぐにわかった。
あぁ、とため息なのか納得なのか見分けのつかないものがこぼれるのと同じくして芝生に座り込む。これは、きっとあれ。会心の一撃。
「これがしたかったのかぁ」
「うん」
「ケイちゃん、あのねぇ」
崩れた姿勢のままそちらを見上げても、影になって表情だけはうかがい知ることができない。細部まで完璧にイメージが掴めているのはまた別の話として。
逆のポジションならどれだけマシだったか。
自分がどんな顔をしているのか、これでは読んで字のごとく白日のもとにさらされてしまうから。
「こういうのは誰もいないとこで、ね」
念押しするにはいささか腹に力が入っていなかったかも。
ランダム単語ガチャ No.2191「逆光」
