オルガ

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  夜の暗がりが連想させるものは、わたしたちがもうすぐ向かう場所を嫌でも連想させる。「宇宙になんて行きたくなーい」 グラウンドのそばにある研究棟からの目も、周りも気になってはいたものの、軽く叫んでみた。火花の弾ける音と煙の向こうか…

かじかんだ手

  ここまでのあらすじ 真夏! エアコン! 二五度! あらすじおわり 「寒いんだよ」 と文句を言う気でいたが今日はさすがに気温の暴力的な上昇の方がインパクト大だったので口をつぐむ。脱いだジャージをソファーに引っかけ、エア…

ロレムイプサム

  いつの間にか引き結んでいた拳をやっとのことでこじ開けた。操縦桿を握る、壁を殴る、普段から酷使している手はのそれのような柔らかさからはかけ離れている。「オルガの声」 諸々の情報を削ぎ落としたことばは、しかし感情だけは伝わった。空…

ティーンエージャー

  ここまでのあらすじ「この時間帯は待機室のビデオログをつける! お前たちはどうせまともに行動記録なんてつけられないからな!」 あらすじおわり 正確には「仮につけたとしても活用に値しないものができあがる」だが。論理的な思考とその出…

朝もや

 「ガキ」「ガキオブガキ」「キングオブガキ」 誰がどれを言ったのか。それはともかく、わたしがこんなにも一生懸命説明しているのに一斉にこの反応。夜中に全員叩き起こしたこちらに非があるとはいえあんまりだ――と立場を棚に上げて悲観してし…

シャッターチャンス

  私は常々考えている。報道とは皆へ公平に情報を提供する神聖な活動だ。知らないままでは、受けられるはずだった利益を受けられない。隠れたところで悪事を働く輩を暴かなければ犠牲者は増え続ける。そのような悲しい事態を未然に防ぐことだって…

アクセント

  今日の帰り道は長い。「それでね、今度は駅向こうの……」「あー、新しくできたとこ! そこにしましょう」 目の前をが歩いているが、その隣に他人がいるとやけに話しかけづらい。傍から見れば十歩ほど離れてはいるだろう距離は、こちらが意図…

男の子

  オルガがみんなの中で少しだけ早起きなのは、このヘアワックスのためだった。小さなケースから適量を掬って手のひらに伸ばして前髪へ――の一連の動きは手慣れていて、まじまじ観察する間もなく終わってしまう。ひとりで肩を落とすわたしを、オ…

  差し出されたものにはとてもよく見覚えがあった。「はい。差し入れ」 これで三度目だったと思う。さすがに気づき始めた違和感は、けれどクロトがさっさと教室を出ていってしまったから保留になった。「ふたりで食べようよー」 呼び止める声は…

生活指導

 「君なら経皮吸収くらいわかるだろう? たとえ定番品だろうが彼らの体内に入り込んだら相互作用を引き起こす可能性は十分にある。つまり慎重に慎重を重ねた確認が必要になるわけで」 と懇切丁寧に説明する私の心労などつゆ知らず彼らは興味深く…