SEED短編

出来損ない

  保護具、サイレンサー、時間制限。邪魔なものをすべて取っ払っても弾は的の外周そのまた外の壁面へそれていった。この銃の整備不良も疑ったが、ついさっき同じものを手にしていたは下手なりに命中はさせている。人型をしたターゲットの肩や腕あ…

シャノンの最終機械

  IFFと同等の技術は連合でもザフトでも当たり前に使われている。混戦において間違って味方を攻撃することがないように、各機体から信号を常に発信しておくのがオーソドックス。その信号は自軍の機体に搭載された兵装を制御するから突発的な誤…

生活指導

 「君なら経皮吸収くらいわかるだろう? たとえ定番品だろうが彼らの体内に入り込んだら相互作用を引き起こす可能性は十分にある。つまり慎重に慎重を重ねた確認が必要になるわけで」 と懇切丁寧に説明する私の心労などつゆ知らず彼らは興味深く…

コップの中の嵐

  シャニにベッドを占領されたは、ふてぶてしくあお向けで寝そべる男のすぐそばで申し訳程度に腰かけていた。向かいに無人の二段ベッドがあるにもかかわらず。「どこで寝ても変わらないんじゃないの」 入口で身を乗り出すと、センサーに引っかか…

グレーゾーン

  騒ぎの中心にいるふたりはガタイのいいツナギの男たちだった。雑な仕事しやがってだのタダ同然の金払いで偉そうにだの、職人同士らしい言い争いは次第に掴み合いに発展していく。タイミングがいいやら悪いやら、このドックには乱闘を止めようと…

ホットコーヒー

  人を、看取ったことがあるという。今となっては幸福なことだろうに、それを話すのはぽつぽつと力なく。「一度血圧が下がり始めたらだめなんだって。指先からどんどん冷たくなって……わたしが握ってたらそのときだけは温かくなったけど」 の両…

有刺鉄線

  蝉の抜け殻がひとつ、むき出しの地面の色に溶け込むようにぽつりと落ちていた。正確には、ただの枯れ葉色をしたかたまりを見つけただけ。それが生き物が残していくものだと知ったのは少し後だ。 今思えばあれは、硬そうな爪と虚ろな目。触れて…

おぼえがき

  が持ち込んだ私物の中には卓上カレンダーがあった。観光地の写真が印刷された色鮮やかな――だが古めかしさも感じる代物。実物を見るのはこれが初めてだ。「予定なんて端末にまとめてなかったっけ?」「そうだけど、せっかく当たったから」 く…

調味料

 「薄い」 テーブルの隅に寄せてあったスパイスの容器をつかんで、なんの味もしないスープにぶちまけた。向かいで同じ食事をしていたの表情がにわかに引きつる。「もう三回目だよ。辛くない?」「まだ足りないくらいだ。ずっと前からどんどん味つ…