SEED短編

トマトソース

「すっごくいい匂いがしたんだよ」「理由はそれだけ?」 じとりと睨む目線が緩むことはなく。「……すっごく腹減ってたんだよ」「言いたいことはそれだけ?」 態度が軟化することもない。「うっそだろがここまで怒るのかよ……?」「さすがにこれは怒るでし…

イフのさいはて

 迫ってくる機体も、揺れるコクピットも、全ては仮想空間でのできごとだった。シミュレーターの中でが殺されることはない。傍から見れば真剣な彼女の挙動は、しかし恐怖に突き動かされてのものだ。上手くできなければ艦の皆もろとも体を蒸発させながら死んで…

アイライン

 気分よく自室を出ようとしたところを阻止されたのを、通路の誰も目撃することはなかった。押し入ってきた三人の誰かがロックをかければ、この部屋の様子を伺い知ることは不可能。そのせいか、三者三様の余裕が表情に浮かび。「さてと、確かめさせてもらうぜ…

イフの骨組み

 ※原作沿いで進めたらこうなるだろうなという妄想です。 ***「地球の両親はお亡くなりに、そうして君は軍へ」 どこか得意げにしている意味がわからないと、そう態度で示すことしかできない。理事は表面的には友好的な笑顔のまま画面を見つめ続けていて…

ネオンライト

 せっかくの外出許可を、シャニが大喜びすることはなかった。かといえば艦に閉じこもっているでもなく、わたしを連れて港町の繁華街へこうして踏み込んでいる。 ほとんど日の落ちた時刻に。「すぐ門限になっちゃうね。急いで行こうか」「……時間制限のこと…

スケジュール

  ※注意:モブの倫理観皆無 *** 君の頭痛は典型的な眼精疲労。改善には目を休ませることが必要ですよ。そう教えてくれた医務官は、おしまいにフィルター加工がされた眼鏡を譲ってくれた。そんな彼は今日、寄港のついでに本部に向かって艦に…

ヒップホップ

  端末から国営のライブラリに接続すれば、メジャーな映画や音楽ならすぐにでも探し出せる。ひと昔前のものがほとんどだけれど。 そして今、その端末は哀れ人質にされて。 「早くミーティングルーム来いよ! さもなきゃここをダンス…

伸びしろ

 人差し指から、手のひらへ。少し硬い両手で包んで、輪郭を確かめるように軽く握り締めて。  始めること数分、シャニは飽きることなくわたしの右手で遊び続けていた。靴を脱いでソファーへ正座したときは何かと思ったけれど、いざOKした後もよ…

模範解答

「お前はこういう訓練受けてたのか?」「射撃と体術、重力下・無重力下のMSやMA操縦……規定時間ぎりぎりだけど」「最低限ってことか」 予想通りだとオルガが笑う後ろでは、人型の的の急所に綺麗に数発入っている。袖が煤けているのは、もしかしたら実弾…