人差し指から、手のひらへ。少し硬い両手で包んで、輪郭を確かめるように軽く握り締めて。
始めること数分、シャニは飽きることなくわたしの右手で遊び続けていた。靴を脱いでソファーへ正座したときは何かと思ったけれど、いざOKした後もよくよく考えたら何が何だかわからない。
気だるげな目を伏せて、それでも微かに緩む唇からはそれなりにごきげんな様子が伝わってくる。
「……こんなに、誰かに触れることってあんまりない」
指の腹をくすぐる、少し伸びた爪。
「シアの手、小さい。何で」
「うーん……まだ成長中だからかなぁ……?」
「それなら俺もまだ成長期だ」
猫背気味に手のひらを覗き込んでいたシャニがふと視線を上げると、上目遣いになる。ぽそぽそと話す声が掠れてもよく聞き取れるほど、近くで。
「もっとシアが小さくなるね」
答えようとして、できなかった。出てきたのはひっくり返った小さな声。
微かに冷たい指が、袖から潜り込んで手首の内側を這うから。
「何その顔」
「えっと、よくわからない。びっくりしちゃって……」
奥へ奥へと触れられるごとに、形のない拒絶が喉から溢れ出そうになる。嫌悪感とは違った。わたしじゃない体温が、わたしの中心に向かって進んでいく違和感と、危機感。
「シャニ、だめだよ……」
「何で」
「だって変な感じがする」
「何がだめかなんてわかるかよ」
身を乗り出したシャニに気圧されて引いた体が、バランスを崩してソファーへ倒れ込む。
繋ぎ直した手が、一気に熱を帯びていく。その熱さがどちらのものなのかわからないまま。
「敵を倒すのがいいこと。それ以外のことは知ったことじゃない」
覆い被さって、真上から見下ろす目。悪戯っぽいからかいはすぐに消え去り、後には純粋な疑問だけが残っていた。
「……こうやってシアに触れたいのが、どうしてだめなんだよ。さっきからその顔は何なんだ」
起こっていることを呑み込めない。まともな答えを取り出せない。自分の気持ちがとろりと溶けて掴めないもどかしさは、そのままシャニのものでもあるのかもしれない。
とにもかくにも、今はっきりとしているのはひとつだけ。
「……恥ずかしいよ……」
「ふぅん」
「どいてくれないの?」
「恥ずかしいときの顔なんだな、それ。その顔好きだからどかない」
「シャニが意地悪だ」
上がる口角は、またしてもわたしの抗議を聞き流したことを表していた。
「そんなに言うならこれからシアが教えろよ。どこまでならいいんだ」
ランダム単語ガチャ No.2605「伸びしろ」
