「お前はこういう訓練受けてたのか?」
「射撃と体術、重力下・無重力下のMSやMA操縦……規定時間ぎりぎりだけど」
「最低限ってことか」
予想通りだとオルガが笑う後ろでは、人型の的の急所に綺麗に数発入っている。袖が煤けているのは、もしかしたら実弾を使っていたのかもしれない。あの穴がどんな武器によるものなのか、わたしにはわからない。
「それでよく毎度のこと俺たちの部屋に来れるもんだな」
「どういう意味?」
「俺もあいつらも、こんな腕なんか簡単に折れるって意味だ。危機感ないのかよ」
ふと掴まれた手首。未だグローブに包まれたままの大きな手は、わたしよりもずっとずっと昔から銃を構えてきた日々の上に作られている。
オルガのことばも、同じ作られ方をしているのだろうか?
――とてもそうは思えない。唇に浮かんだ笑みは悪辣で、同時に偽悪だと感じたから。
「オルガはしないよ。ふたりだって」
「言い切るんだな。監視があるからか?」
「そうする理由がないもの」
高いところにある瞳が、沈黙の中瞬いた。
「……こじつけ」
「でも、間違ってないでしょ?」
「何でお前みたいなのが軍人やってんだろーな。おいその余裕の笑顔止めろ!」
わたしの頬を摘むオルガは盛大に呆れて、そうして放してもらえるのだと思った。
その予想は真逆に裏切られて。
「……そうだよ。どうしたらアリーシアが怖がるかも痛がるかも俺はもう知ってる。後はそのラインに踏み込むかどうかの話だろ」
ぐい、と腕を引かれた先で、制服の胸に抱きとめられる。鼓動の聞こえない距離で、小さく息をつく音は確かに届いた。
「俺はそんなことはしない。だから俺から離れるなんて許さないからな」
「離れないよ。そんなこと考えたことない」
「じゃあ演習場に何の用だよ。他の前線に出るつもりじゃなかったのか?」
「射撃訓練の時間が足りないって警告が届いたから……」
「ぎりぎり足りてないんじゃねえか!」
「新造艦配属はいろいろと手続きに時間かかるんですー!」
「うるせぇうるせぇ、クソ真面目なくせにポンコツとか、本当」
背に触れる手が、温かいような気がした。
「……当たって悪かった。焦らせるんじゃねえよ」
「……うん、ごめんね」
「気晴らしに俺が徹底的にしごいてやる。さっさと構えろ」
「そんなぁ」
今の今まで柔らかく抱きしめてくれていたくせに、次の瞬間には射撃ブースにわたしを引っ張っていく。それでも、凍りついたものに近かった表情が熱に溶けてなくなったことは伝わって。
オルガの指導の厳しさを予期しながら、今まででいちばん肩の力を抜いて銃を構えた。
照準ブレてんぞ、とさっそく指摘が飛んでくる。
ランダム単語ガチャ No.4644「模範解答」
