クロト

朝もや

 「ガキ」「ガキオブガキ」「キングオブガキ」 誰がどれを言ったのか。それはともかく、わたしがこんなにも一生懸命説明しているのに一斉にこの反応。夜中に全員叩き起こしたこちらに非があるとはいえあんまりだ――と立場を棚に上げて悲観してし…

シャッターチャンス

  私は常々考えている。報道とは皆へ公平に情報を提供する神聖な活動だ。知らないままでは、受けられるはずだった利益を受けられない。隠れたところで悪事を働く輩を暴かなければ犠牲者は増え続ける。そのような悲しい事態を未然に防ぐことだって…

  差し出されたものにはとてもよく見覚えがあった。「はい。差し入れ」 これで三度目だったと思う。さすがに気づき始めた違和感は、けれどクロトがさっさと教室を出ていってしまったから保留になった。「ふたりで食べようよー」 呼び止める声は…

スペシャリスト

  メープルシロップとハチミツ。カットしたバター。すでに用意された濡れぶきん。まだ出番ではないらしいバニラアイスは冷凍庫の中。混ぜ終えられたホットケーキミックスは微かに甘い香りがする。 カウンターには、温かい完成品が鎮座する円くて…

生活指導

 「君なら経皮吸収くらいわかるだろう? たとえ定番品だろうが彼らの体内に入り込んだら相互作用を引き起こす可能性は十分にある。つまり慎重に慎重を重ねた確認が必要になるわけで」 と懇切丁寧に説明する私の心労などつゆ知らず彼らは興味深く…

続 サイコロでつくった本

 第2弾ができました。やったぜ。 夢主またはお相手のどちらかが拘束されてるシチュエーションばかりです。手錠だったり目隠しだったり口ふさいでたり。あーもう(性癖)めちゃくちゃだよ 自宅に届いたのが25日。クリスマスです。がんばって締め切りに間…

コップの中の嵐

  シャニにベッドを占領されたは、ふてぶてしくあお向けで寝そべる男のすぐそばで申し訳程度に腰かけていた。向かいに無人の二段ベッドがあるにもかかわらず。「どこで寝ても変わらないんじゃないの」 入口で身を乗り出すと、センサーに引っかか…

防犯ブザー

  今週は全国ナントカ協会の防犯キャンペーンらしい。お昼休み直後の校内放送は、強烈な眠気に負けたわたしを含めたほとんどの生徒がまともに聞いていなかった。とはいえ、そんな日だったという印象づけには成功したはずだ。 わたしたちの手元に…

グレーゾーン

  騒ぎの中心にいるふたりはガタイのいいツナギの男たちだった。雑な仕事しやがってだのタダ同然の金払いで偉そうにだの、職人同士らしい言い争いは次第に掴み合いに発展していく。タイミングがいいやら悪いやら、このドックには乱闘を止めようと…

恐怖症

  シャニが指差す先ではスラックスの裾が土で汚れていた。いら立ちまぎれに脱ぎ捨てたスニーカーも同じく。手入れが面倒だと思うと、追撃に蹴りの数発でも入れておけばよかったと若干の後悔が頭をもたげた。そうせずに帰ってきたのは単純に暑かっ…