オルガ

カルテット

  寝たふりをするとどうしても目元に力が入る。自覚はあっても続けなくてはいけないシチュエーションがあるだなんて思ってもみなかった。まぶた越しの暗がりに突然灯された暴力的なほどまぶしい照明は、薄目を開けて周りの様子をうかがうことすら…

エンドロール

 「わたしの家は火葬だった。でも土葬のところもあるみたい……」 思い出しながらの発言はあいまいに揺らいだ。そうさせたオルガは頷きながらペーパーバックへ視線を戻す。いつも静かに本を読む彼がこちらへ声をかけるときは、だいたいその頁の上…

棍棒外交

  寮に対してはあらゆる噂がまことしやかにささやかれている。やれ精鋭部隊の養成所だとか、やれ夕方に銃の訓練をしてるだとか。 もちろんぜんぶでたらめだ。寮にいるのはただの特待生たちで、銃声はおそらくクロトとが窓全開でシューティングゲ…

地獄絵図

  久しぶりに聞いた通知音は、あまり機能していないメッセージグループへの着信だった。この寮の四人全員を巻き込むほどの用事が起きることは少ないからこそ、その用件がやけに気になる。面と向かって言えない相談だろうか。 デスクに置いていた…

犠牲バント

 「じゃあ次、必殺技といえば?」 わたしの質問にしばしの間を置いてそれぞれの答えが部屋のあちこちから返ってくる。「……アバンストラッシュ」「超究武神覇斬でしょ」「波動砲しかないな」「オルガのは技じゃなくて武器だろ。判定」「うーんヤ…

四天王

 「悪の幹部っていいよな」 言い出したのはクロトだった。おのおの適当に暇を潰している(ひとり業務に追われている者もいる)なか振り向くと、彼はいつもとは異なる携帯ゲーム機を握りしめている。「新しい支給品か?」「いやの私物からパクった…

se-cure.

 2022年09月18日 イベント「夢道楽オンライン4回目!」にて頒布。ガンダムSEED旧連合トリオの短編集でした。サイト再録。 初めて自分で表紙・裏表紙・カラーページのイラストを描いた本でした! トリオの私服はそれとなく本編中のカラーリン…

くすぐる

 大昔の映画をテレビで見ていた。 放送が終わってふと隣を窺うとが涙ぐんでいた。 なぜかぐっと来た。 以上。「うわやべーやつだ」「は?」 暇に任せて何か面白い話をとねだった張本人から飛び出たのはど直球な暴言だった。クロトはドン引きを隠さない表…