SEED短編

ホウセンカ

  外の騒がしさは夕闇が深まるにつれてますます大きくなっていった。それに比例するように灯っていたライトの眩しさが映えていく。甲板から眺めていると、客は現地住民だけでなくこの艦からの者も混じっているようだった。彼らは私服にそぐわない…

先制攻撃

 前々回のくすぐり。 前回の猫だまし。 そして今回、ペンライトでの目くらまし。 目の前にはナイフがある。 その向こうには喜びを隠しきれない唇が。「レギュレーション違反でしょ!」「実戦にレギュレーションも何もないだろ!」 続く正論がとどめにな…

隔絶

 薄い肩を引き寄せてすぐさまドアをロックした。未だ状況の全てを把握できていない色をしている目が、冷たく仕切られたこちら側で瞬く。「お前が悪いんだよ」 もっと、もっと他に伝えたいことがたくさんある。それなのに出てくるのは責めることばだけだ。こ…

トラウマ

 同じ訓練を受けていた若い男がいた。そいつは五度目の投薬の後に血を吐いて死んだ。それを仕方なく監督官のところに運んだ。部屋に戻ると手の甲に血が飛んでいた。 そんな、三十秒にも満たない話。はベッドの上で黙って聞いていた。無表情の下には微かな同…

痛み

 度々見る光景、それも窓の向こう。夢ではないと確信できたのはつい先日のことだった。 薬の効力が切れ、部屋への通信は切られ、神経系が焼き切れ――これは錯覚だが。掠れる視界と薄れる意識の中で、聞こえるはずのない涙声。 経過観察する者しかいない窓…

トマトソース

「すっごくいい匂いがしたんだよ」「理由はそれだけ?」 じとりと睨む目線が緩むことはなく。「……すっごく腹減ってたんだよ」「言いたいことはそれだけ?」 態度が軟化することもない。「うっそだろがここまで怒るのかよ……?」「さすがにこれは怒るでし…

イフのさいはて

 迫ってくる機体も、揺れるコクピットも、全ては仮想空間でのできごとだった。シミュレーターの中でが殺されることはない。傍から見れば真剣な彼女の挙動は、しかし恐怖に突き動かされてのものだ。上手くできなければ艦の皆もろとも体を蒸発させながら死んで…

アイライン

 気分よく自室を出ようとしたところを阻止されたのを、通路の誰も目撃することはなかった。押し入ってきた三人の誰かがロックをかければ、この部屋の様子を伺い知ることは不可能。そのせいか、三者三様の余裕が表情に浮かび。「さてと、確かめさせてもらうぜ…

イフの骨組み

 ※原作沿いで進めたらこうなるだろうなという妄想です。 ***「地球の両親はお亡くなりに、そうして君は軍へ」 どこか得意げにしている意味がわからないと、そう態度で示すことしかできない。理事は表面的には友好的な笑顔のまま画面を見つめ続けていて…

ネオンライト

 せっかくの外出許可を、シャニが大喜びすることはなかった。かといえば艦に閉じこもっているでもなく、わたしを連れて港町の繁華街へこうして踏み込んでいる。 ほとんど日の落ちた時刻に。「すぐ門限になっちゃうね。急いで行こうか」「……時間制限のこと…

スケジュール

  ※注意:モブの倫理観皆無 *** 君の頭痛は典型的な眼精疲労。改善には目を休ませることが必要ですよ。そう教えてくれた医務官は、おしまいにフィルター加工がされた眼鏡を譲ってくれた。そんな彼は今日、寄港のついでに本部に向かって艦に…

ヒップホップ

  端末から国営のライブラリに接続すれば、メジャーな映画や音楽ならすぐにでも探し出せる。ひと昔前のものがほとんどだけれど。 そして今、その端末は哀れ人質にされて。 「早くミーティングルーム来いよ! さもなきゃここをダンス…