愛の言葉
棒状をしたレモン色のアイスが中央で折り取られ、片方を差し出される。 愛とは何だ? その問いに対する答えだとわかったのは、ずいぶんと誇らしげな顔を浮かべて撤回しようとしないから。「これのどこが」「お徳用の飴と比べてみて。二分の一だよ? こ…
RE!ワンライ:雲雀雲雀
かわいい
ドライヤーを止めて、そうっと指を髪に差し入れて。何度か繰り返すのに飽きる素振りも見せない彼女からは「おしまい」のひとことがそろそろ訪れるはずだった。そういう当人の髪はすでに手入れが終わっている。数分前にドライヤーを当てて梳かしたのは僕だ。…
RE!ワンライ:雲雀雲雀
祭り
どんなに憧れても、インフィオラータをこの目にすることはできない。暇に任せて読んでいたガイドブックに何ページも展開していた花祭りは、遥か遠くイタリアのものだ。「だからって僕を連れ出す理由がわからないな」「来年のことはわからないんだもん、いつ…
RE!ワンライ:雲雀雲雀
手の大きさ比べ
帰ろう、そんなことばとともに差し出される手をすんなり握り返すのはまだ慣れない。思わず返事に詰まったところをキョーヤは聞き逃さなかった。「何」「何でもない」「嘘をつくときの目だね」「見抜かないでよ」「やっぱり嘘か」「鎌かけた……?」 通りす…
RE!ワンライ:雲雀雲雀
恋バナ
浅い眠りから覚めたのは、彼女の名前をさえずりながら飛び回る小鳥の仕業だった。長くはないつき合いだが、何を言われているのかはこの状況も相まって大体把握できる。「そうだね、いい子だよ。真面目に学校生活を送ってる」 座り込んだ膝に降りてくる黄色…
RE!ワンライ:雲雀雲雀
写真
その手にあるのは、いかにも使いかけとわかる古いインスタントカメラ。この部屋に残った、風紀委員の備品らしいが――覚えはない。 試し撮りにヒバードを二枚、残りのフィルムは三枚。そう言って、彼を頭に載せて得意げに振り返る彼女の次のことばは予想が…
RE!ワンライ:雲雀雲雀
いたずら
机に引っかけておいた鞄がない。困って、教室の外で待っていたキョーヤを振り返る。その手には見間違いようのない、わたしの鞄が掴まれて揺れていた。いつの間に。「もらった」「もらわないで……」「どうしようか。これはもう僕のものだけど、何が入ってた…
RE!ワンライ:雲雀雲雀
恋の自覚
「邪魔したらただじゃ済まない」 脅し文句といえど、何度も繰り返したならその効力は擦り切れていく。ましてやこの場合、こちらにそれほど報復の意思もないからなおさらだ。「わかってるよ」 いつものように屋上で昼寝をする隣で、彼女はいつものように好き…
RE!ワンライ:雲雀雲雀
星
「今。今完全に起きたら何かいいことあるの」「えーっと、たくさん楽しい」「ふぅん」 キョーヤは二度寝から起きようとしない。こうして家に上げてくれた時点で、今回の企画を飲んでくれたも同然なのに。「天の川! 流れ星! 最悪何か星を見ようって」「焦…
RE!ワンライ:雲雀雲雀
触れる
昨日彼女に下した命令は「これから一週間、僕相手にごまかすな」。それだけだった。 ***「やった、わたしの勝ちだね!」「百十何戦のうちの今日だけだよ」「勝ちは勝ち! 勝者の権利、覚えてる?」 手札を机に広げながら得意げにするのを目の前に、仕…
RE!ワンライ:雲雀雲雀
こっち向いて
並盛どころか日本中、世界中の誰もが浮足立っているようだった。教室の真ん中でぼんやりとラジオに耳を傾けている彼女も例外ではなく、窓からいくつでも数えられる色彩の賑やかなアドバルーンを横目にしている。「もうすぐミレニアムなんだね」「そうだった…
RE!ワンライ:雲雀雲雀
綺麗
ぽとりと、頭上に降ってきたのは朝顔だった。続いて、窓から身を乗り出す彼女の焦った声。「ごめんねー、それわたしのー」 拾い上げたそれは、まあまあよくできた造花だ。そろそろ街の七夕祭りの時間だと思い出す。急いで降りてきた彼女のクラスでは、あり…
RE!ワンライ:雲雀雲雀