シャニ

自白

「ネタは光ってんだよ!」「ネタは光らねーよ」「お寿司かな?」 この刑事もどきたちは一枚岩ではないらしい。向かい合う三人のうち、真ん中のボキャブラリーに不安があるチビはリビングの机をけたたましく叩いてキッチンの方を指さした。 そこには空のプラ…

隔絶

 薄い肩を引き寄せてすぐさまドアをロックした。未だ状況の全てを把握できていない色をしている目が、冷たく仕切られたこちら側で瞬く。「お前が悪いんだよ」 もっと、もっと他に伝えたいことがたくさんある。それなのに出てくるのは責めることばだけだ。こ…

トラウマ

 同じ訓練を受けていた若い男がいた。そいつは五度目の投薬の後に血を吐いて死んだ。それを仕方なく監督官のところに運んだ。部屋に戻ると手の甲に血が飛んでいた。 そんな、三十秒にも満たない話。はベッドの上で黙って聞いていた。無表情の下には微かな同…

飽和

 誰よりも早起きなが起きてこない。そんなことが起こるのは稀であり、平日休日を問わなかった。 その原因も、決まっている。 朝食を取る気にもならずミネラルウォーター片手に二階へ戻り、鍵のかかっていない部屋へ押し入った。 聞こえるのは掠れた、どこ…

羽毛布団

「あっつー、暖房効きすぎじゃないかー?」「そんなことないよ、寒いくらいですー」 一階から上ってくる足音の方へ言い返しながら、カーディガンの裾を整える。どうせ昨日のように寒い寒いと言いながら三人揃って全速力で学校から走ってきたに決まっているの…

からあげ

  深夜二時、部屋を出た。やわらかスリッパは足音を簡単に隠してしまえる。 目的はキッチンの冷蔵庫。最低限の明かりだけスイッチを入れるとやっぱり薄暗い。「お腹すいたなー……」 この時間、ホットミルクなら罪悪感も薄い。それでもだめなら…

イフのさいはて

 迫ってくる機体も、揺れるコクピットも、全ては仮想空間でのできごとだった。シミュレーターの中でが殺されることはない。傍から見れば真剣な彼女の挙動は、しかし恐怖に突き動かされてのものだ。上手くできなければ艦の皆もろとも体を蒸発させながら死んで…

アイライン

 気分よく自室を出ようとしたところを阻止されたのを、通路の誰も目撃することはなかった。押し入ってきた三人の誰かがロックをかければ、この部屋の様子を伺い知ることは不可能。そのせいか、三者三様の余裕が表情に浮かび。「さてと、確かめさせてもらうぜ…

イフの骨組み

 ※原作沿いで進めたらこうなるだろうなという妄想です。 ***「地球の両親はお亡くなりに、そうして君は軍へ」 どこか得意げにしている意味がわからないと、そう態度で示すことしかできない。理事は表面的には友好的な笑顔のまま画面を見つめ続けていて…

ネオンライト

 せっかくの外出許可を、シャニが大喜びすることはなかった。かといえば艦に閉じこもっているでもなく、わたしを連れて港町の繁華街へこうして踏み込んでいる。 ほとんど日の落ちた時刻に。「すぐ門限になっちゃうね。急いで行こうか」「……時間制限のこと…