雲雀

幸せなこどもたち

  車両にはふたりきりの空間ができあがっていた。穏やかな揺れとともに海辺の駅を離れていく間、僕たちは同じものを見つめている。あれほど目立つものはなかったから。 尖塔のふもと、大勢の人間の歓声を受けているのだろう。花の広場に歩み出る…

ビギナーズラックか否か

 「ストロー使わないんだね」 そう小声で聞いたらとてつもなく怪訝な顔をされた。そこでようやく、今運ばれてきたのがジュースではないことを認識できた気がする。ほんの少しコーヒーを混ぜた牛乳のような、乳白よりわずかに沈んだ色には氷が浮か…

いっしょに踊って

  突然の落雷にも、それによる停電にもが大きく驚くことはなかった。その証拠に、屋外から避難させてきた鉢植えが置かれた窓辺から離れようとはしない。稲光が姿を表すたびにわずかに肩を跳ねさせるのを隠せないまま。「大雨にはならないそうだよ…

正午のトマト

  チキンライスの上に乗せたふわふわ卵は宝石が輝くのと同じくらい輝いて、つやつやとしている。食器を並べ終えてこちらへ戻る足音に顔を上げると「いい香りがする」と嬉しそうなことばも弾んでやってきた。「ちょうどできたよ、大成功」「綺麗だ…

パラダイムシフト

  キョーヤが声を荒げたり、驚いて叫ぶのを見たことがない。そんな発見から今日の計画が生まれた。研究対象はどこ吹く風とばかりに座布団の上、湯呑みで緑茶を味わっている。午後の日差しの中で余裕を絵に描いたよう。 そして実験はすでに終了し…

子猫

 繰り返し見た映像をよそに、キョーヤはこちらへ手を差し出す。「ほら」 言い出したのはわたしなのに、より乗り気なのはキョーヤの方だ。脱力する長い指を両手で迎えつつ、思い返すのはこれもまた何度も聞いたナレーション。「猫の甘噛みは愛情表…

アルバート坊やの条件づけ実験

  この部屋に運び込むダンボール箱はこれで最後だった。一階からここまでを何往復したか数えるのも忘れてしまうくらい大変だったけど、ひと足先に着いていたキョーヤが振り向いたときには疲れなんてどこかに飛んでいってしまう。「キョーヤ、これ…

仮説

※「ぬいぐるみ」のifルートです。  細かな記憶はないが、横寝に最適な環境を手に入れたのだと満足したことは確かだった。だがそれの成立に人柱を要したことはまったく記憶の外にある。 犠牲になったのがだったことは、必然かつ最良の結果。 …

続 サイコロでつくった本

 第2弾ができました。やったぜ。 夢主またはお相手のどちらかが拘束されてるシチュエーションばかりです。手錠だったり目隠しだったり口ふさいでたり。あーもう(性癖)めちゃくちゃだよ 自宅に届いたのが25日。クリスマスです。がんばって締め切りに間…

ぬいぐるみ

  ここまでのあらすじ 雲雀恭弥「好きで横向き寝をしようと思ったことがない」 あらすじおわり 「違和感がある。あお向けに慣れてるからなのか」「そんなときにはこの子!」「君か。頼もしいね」 お褒めのことばとともにキョーヤは…