クロト

羽毛布団

「あっつー、暖房効きすぎじゃないかー?」「そんなことないよ、寒いくらいですー」 一階から上ってくる足音の方へ言い返しながら、カーディガンの裾を整える。どうせ昨日のように寒い寒いと言いながら三人揃って全速力で学校から走ってきたに決まっているの…

殺気立った目

 一歩。 三歩。 駆け足で六歩。 聞き間違いではなかったらしい。振り返らなくたって足音が重なっているのがわかる。夕方の影法師は運悪く背後へ伸びて。 気づいてしまっては外に留まる気にもならない。お行儀悪く早足のままスマートフォンのタップを繰り…

トマトソース

「すっごくいい匂いがしたんだよ」「理由はそれだけ?」 じとりと睨む目線が緩むことはなく。「……すっごく腹減ってたんだよ」「言いたいことはそれだけ?」 態度が軟化することもない。「うっそだろがここまで怒るのかよ……?」「さすがにこれは怒るでし…

アイライン

 気分よく自室を出ようとしたところを阻止されたのを、通路の誰も目撃することはなかった。押し入ってきた三人の誰かがロックをかければ、この部屋の様子を伺い知ることは不可能。そのせいか、三者三様の余裕が表情に浮かび。「さてと、確かめさせてもらうぜ…

イフの骨組み

 ※原作沿いで進めたらこうなるだろうなという妄想です。 ***「地球の両親はお亡くなりに、そうして君は軍へ」 どこか得意げにしている意味がわからないと、そう態度で示すことしかできない。理事は表面的には友好的な笑顔のまま画面を見つめ続けていて…

スケジュール

  ※注意:モブの倫理観皆無 *** 君の頭痛は典型的な眼精疲労。改善には目を休ませることが必要ですよ。そう教えてくれた医務官は、おしまいにフィルター加工がされた眼鏡を譲ってくれた。そんな彼は今日、寄港のついでに本部に向かって艦に…

ヒップホップ

  端末から国営のライブラリに接続すれば、メジャーな映画や音楽ならすぐにでも探し出せる。ひと昔前のものがほとんどだけれど。 そして今、その端末は哀れ人質にされて。 「早くミーティングルーム来いよ! さもなきゃここをダンス…