RE!短編:雲雀

禁断症状

  ※「特効薬」の続きです。  ここまでのあらすじ 風紀委員長に二言はないのでまた吊るされた。自力で脱出しようとしたけど目の前にいるのは雲雀恭弥なのでやめた。 あらすじおわり  キョーヤの部屋の天井にはいくつか…

リラクゼーション

  ※「ブランケット」の続きです。  ここまでのあらすじ 雲雀恭弥、半猫化する あらすじおわり  は自分が猫になるのを喜ぶタイプだと思ってた、とキョーヤは言った。ふくふくの耳としっぽ、軽い体。わたしに現れた可愛…

色仕掛け

  彼のそばにいたのは黒いパンツスーツをきっちりと着込んだ、大学生くらいの女のひと。淡い色の髪をふんわり巻いて、靴は華奢なピンヒール。すらりと背が高くてモデルさんのようにきれいな彼女はにこやかに、校門でわたしを待っていたキョーヤと…

サプリメント

 「君ならいい対策を知ってるでしょ」 学校で、この家で、最近キョーヤはなかなか寝つけずにいるという。普段はすとんと熟睡まで行けるのに。眠りが浅い、というのとは違ってあらぬタイミングで叩き起こされるような嫌な寝覚めを繰り返すのだとか…

特効薬

  ここまでのあらすじ 悪モブたちにさらわれた。自力で脱出しようとしたけど絶望的にこんがらがった。もちろん雲雀が助けに来てくれた。 あらすじおわり 「……誰にされたの、それ」 やけに人数の集まっていた保健室をあたったのは…

さくらとよもぎと

  その手はわたしの髪にくっついていた、桜を取ってくれたのだという。「……風流なことをするね」 あいまいな返事しかできなかった記憶がある。そのときは遅刻寸前の焦りと、唐突に立ちはだかった長身への驚きで冷静ではなかったから。後から聞…

太陽光発電

 「サンタさんにもらったプレゼントって、かわいくラッピングしてあるでしょ?」 この家にサンタが来ていたときの記憶はないが、の部屋を訪うサンタの表情ははっきりと想像がついた。先ほどドライヤーを当てたばかりの、さらさらの髪をなでている…

ままごと

  ここまでのあらすじ 悪さして風紀委員会にしばかれたモブ男。むしゃくしゃしてグラウンドを通りがかったについ突っかかった。 あらすじおわり 「お前なんて委員長のお人形のくせに!」 口から出任せだったものの心底からそう思っ…

幸せなこどもたち

  車両にはふたりきりの空間ができあがっていた。穏やかな揺れとともに海辺の駅を離れていく間、僕たちは同じものを見つめている。あれほど目立つものはなかったから。 尖塔のふもと、大勢の人間の歓声を受けているのだろう。花の広場に歩み出る…

ビギナーズラックか否か

 「ストロー使わないんだね」 そう小声で聞いたらとてつもなく怪訝な顔をされた。そこでようやく、今運ばれてきたのがジュースではないことを認識できた気がする。ほんの少しコーヒーを混ぜた牛乳のような、乳白よりわずかに沈んだ色には氷が浮か…

いっしょに踊って

  突然の落雷にも、それによる停電にもが大きく驚くことはなかった。その証拠に、屋外から避難させてきた鉢植えが置かれた窓辺から離れようとはしない。稲光が姿を表すたびにわずかに肩を跳ねさせるのを隠せないまま。「大雨にはならないそうだよ…

正午のトマト

  チキンライスの上に乗せたふわふわ卵は宝石が輝くのと同じくらい輝いて、つやつやとしている。食器を並べ終えてこちらへ戻る足音に顔を上げると「いい香りがする」と嬉しそうなことばも弾んでやってきた。「ちょうどできたよ、大成功」「綺麗だ…