RE!ワンライ:other

 「この花」 指されたのは校庭でうっすらと雪をかぶった椿だった。真っ赤な花びらが白と対極で。 目に焼きつくようなコントラスト。それはベルの服装といっしょだった。いつものラフなファッションとは少し違って、まるでこれから訪れる夜に溶け…

戸惑う

 たった数行の文章を、彼女は導入から読めずにいたのだろう。難しく寄せられる眉が愉快だ。「どこのことば?」「あー、アトランティス」「ベルー……」「あるかもしんねーじゃん。夢持てよ」 一応、これからの任務で滞在する予定の国の言語で書いた。つまり…

頭ぽんぽん

 暗い部屋の中、ただ瞬く目がある。「君は神に祈らないのですか、こんなことをされて」「近所の神社だと拍手を二回」 彼女が再現してみせる「かしわで」というのは神社参りの作法だろうか。ぱちぱちと合わされた手のひらから手首に続く曲線をぼんやりと眺め…

背中合わせ

「傷心中」 そんな貼り紙ひとつ分の結界に骸は引っかかってくれた。軽いノックの後、扉の向こう側で座り込む気配がする。「今度は何です」「顔も見せたくないくらい落ち込んでる」「そんなに酷い泣き顔とは思いませんがね」「客観じゃなくて主観の問題なの。…

君だから

 珍しくポニーテールにしてきたと思えばこれだ。教室に来るまで誰にも指摘されなかったのなら大した幸運だと思う。「後ろ向け」「何で?」「髪。まとめ方がなってねぇ。跳ねてんぞ」「えぇ? ちゃんとできてたはずなのに」 驚きながらも素直に従う背中に回…

ひみつ

「お、赤ずきん。可愛いな」 大切な仕事に出かけるわたしに対して開口一番これなのはどんな偶然だろう。緊張のあまり眠れなくて夜通し絵本を読み耽っていたのがバレたのかとヒヤヒヤした。知られたら絶対いい笑顔でからかわれる。嫌じゃない。悔しいだけ。「…

赤面

「やっぱりツナくんのママのおやつはおいしいねー」 甘いホットケーキにバターがよく合う。ほとんど夢心地で頬張るのを、さっきからツナはじっと眺めている。まるでおいしいものを食べたような幸せそうな笑顔で。「あんまり見ないでよー、何かついてる?」「…

お花見

 花が降っていた。 目を覚ました瞬間、飛び込んできたのは見慣れた部屋の天井ではなく淡いピンクの胡蝶蘭。横になっているのはベッドではなくぶ厚い硝子ケースの中で、花が続々と積もっていく。「どうしてこんなことするの」「君が泣き疲れていたからですよ…