花が降っていた。
目を覚ました瞬間、飛び込んできたのは見慣れた部屋の天井ではなく淡いピンクの胡蝶蘭。横になっているのはベッドではなくぶ厚い硝子ケースの中で、花が続々と積もっていく。
「どうしてこんなことするの」
「君が泣き疲れていたからですよ」
ケースの縁に腰かけ、骸は真上から見下ろす。その背後は白昼夢のように文字通りの白一色で。
「埋もれちゃう、これは幻覚?」
「夢ですよ。今ならよく眠れます、まるで死んだようにね」
揶揄する笑みはどこにもなかった。最後に骸と会ったのは二日前、寒くて暗くて寂しいと支離滅裂な不安をただ聞いてもらった日。
「子どもがこんな寒い季節に夜ふかしするからそうなる」
「骸も同じくらいでしょ」
「現実でそんな口を叩けるようになるといいですね」
視界が花で塞がれていく。寝かしつけたいのか、本当に息の根を止めるつもりなのか、わたしにはわからない。
