RE!ワンライ:ディーノ

にやりと笑う

 赤、黒、赤赤赤。ばらばらの色のとおりに並ぶのは一二三四六の数字。「また負けちゃった。これ何ていう役なの?」「ハイカードだ」「ハイカードって……えー? じゃあわたしのワンペアの方が強かったんだ!」「勝負を降りたお前の読み間違いってことだな」…

勇気

「昨日は本当に悪かった。オレにもう一回チャンスをくれ」 膝をついて、それでもディーノはまっすぐこちらを見つめた。コートを羽織って柔らかそうな両腕が大きく開かれる。「またお前に触れたい。怖いかもしれないけど、来てくれないか……?」 切実と、誠…

あたたかい

 明るい窓辺に何十分もいると、真冬とはいえ暑くなってくる。こうしてベストポジションを占領できるのはディーノがデスクから離れられないからだった。 振り返るとちょうど悲痛な声が転がってくる。それでもペンが走る音は止まらない。「微妙に寒い……書類…

格好悪い

「スイートルームは何がスイートなの?」「甘いんじゃなくて、部屋がひと続きになってるってことだ。ここもそうだろ? そっちの意味のスイート」 数時間前に楽しい英語教室が始まり終わった方を振り返れば、まず視線を吸い寄せるのはジャケットのジッパー。…

憧れ

 グリム童話、日本昔話、イソップ童話も。全部、小さいころに贈られた大切なプレゼントだという。いつか彼女が誰かの膝の上で聞いた不思議な物語を、こうして彼女自身の声で聞くことこそ不思議なのかもしれない。頁を繰る音すら、耳に心地よく触れては消え。…

待ち合わせ

 ちょっと心配になっても絶対動かないこと。ディーノとの約束はそのひとつだった。こういうとき、携帯電話を持っていると本当に便利だと思う。入れ違いになってもすぐ連絡できるから。 腕時計は、ちょうど待ち合わせの時間を差したところ。それなのに、もう…

甘い

 こんなことしたくないんだオレだって。けど仕方ない、ファミリーが天秤にかかってるんだからな。ここの店長は頼めば監視カメラの映像くらいすぐ出してくれる。あ、逃げるなよまだ尋問は始まったばかりだぞ? などなど並べ立てられることばは、傍から聞いた…

振り向く

 簡単な打ち合わせの補足は電話口で済ませてしまおうと、携帯電話片手にスイートルームの端まで歩いていって早十数分。ソファーで、ベッドでごろごろするのもだんだん限界が来て。 そうっとそちらを伺うと、窓辺に立つすらりとした長身が逆光ぎみになってい…

出会った日

 携帯電話のカレンダーを何頁も巻き戻した。 かろうじて残されていた昔の手帳を何頁もめくった。 答えはどこにもない。「オレたちが初めて会ったのはいつだった?」 その問いに明確な答えを持つ者も、ここには。 それでも、目まぐるしい毎日を送る彼女が…

マフラー

 淡い色をした空の下で、こうして大きな手が擦り合わされるのをずっと待っていた。最近寒いよね、と話を切り出すちょうどいいタイミング。「ね、ディーノ! これ、わたしから……」 後ろ手にそれとなく隠し持っていた包みを取り出して――衝撃のあまりその…

アクセサリー

 座布団の上でバイク誌を開くディーノの隣に降りて、頁の真ん中を指差した。ネックレスとブレスレットの間、聞いたことのない名前の華奢な金色の輪。「アンクレットか。足首につけるアクセサリーだよ」「そうなんだ! 綺麗だねー」「つけてみたいか? プレ…

目を逸らす

  綺麗、きらきら、宝石みたい。  全部ディーノに向けられるべきことばだったはずなのに、本人が至って真面目に口にする。わたしを前にして。 「そんなことないよ、普通だよ」「自分のものだからそう思うだけだろ。本当に…