RE!長編01-05

07

 波の音が夕日とともに降り注ぐ時刻、この光景をいちばん喜ぶだろう人間はここにはいない。 二度と現れてはくれない。「あの子の任務はほとんど完璧だった。街に溶け込み住民と親しくなり、情報網を広げては相手の出方を探って。けれどこればかりは」 音も…

06

「……街が元通りになってる……」「逆だよ。僕たちが帰ってきたんだ」 学校の屋上で、ちゃんはフェンス越しにぐるりと三六〇度の景色を見渡した。破壊の跡も戦闘の影もない、少し前まではごく当たり前だった光景を目に焼きつけるように動かない。 ここに欠…

05

 よろよろとシリンダーに歩み寄りちゃんは底を見下ろした。人間ひとりが十分収まるほど大きなそれの中では、海藻のように揺蕩う黒く太いケーブルが数本伸びている。先端は点滴の針に似ているが繋がる先はない。 その透明な水槽の向こうに長身の男が立ってい…

04

 並盛に残った草壁からの連絡が切れても、オープンにしたままの回線は戦闘中の者やサポートに回った者たちの声を拾い続けて黙ることはない。入江に渡された通信機器はちゃんも装着しており、しかしよくわからないまま目の前で繰り広げられる展開を凝視する間…

03

 バニラ、とちゃんは呼んだ。それが自身の匣兵器の名前だと胸を張るのは、その兎がバニラのような色をしているからだろうか。呼ばれた本人は昨日も今日もすやすやとそれは深く眠っている。「可愛いねー。あ、ふたりも同じくらい可愛いよ」 騒ぐロールとヒバ…

02

「僕は可愛いらしいね」「うんうん、可愛くてかっこいい……」ちゃんが過ちに気づいたときには遅かった。きっかり一分くすぐり倒されて畳に沈むのを見てようやく気が済む。「僕は可愛い?」「キョーヤは……世界でいちばんかっこいい……」「いい子だね。その…

01

 えぇと、と何ともか細く今にも潰れそうな声は入江のもの。こちらへ、あちらへと行き来する眼鏡越しの視線が鬱陶しい。こんなことが起こらなかったところで今は何もかもが神経を逆撫でする要素にしかならないだろうが。 それもこれも、すぐそこにいる僕の空…