イフまたイフ

 

長編_4のifルートですがここから読んでも大丈夫です。

 

 ここまでのあらすじ

 カフェの店長にきょうだいに間違えられたアリーシアとオルガ。アリーシアは上機嫌。オルガは不機嫌。

 あらすじおわり

 

「どこがだよ」

 宿舎までの道を戻る足が荒々しくなるのは、いら立ちよりも戸惑いが勝っていた。いや、時間が経つほどいら立ちが膨れ上がっていく。顔つきから体格から……と数えることが馬鹿らしくなるほど、俺たちは似ていない。似ているところを数えたほうが早いだろう――すぐには思い浮かばないが。

「何がだよ。俺とアリーシア? 冗談だろ」
「もういいでしょ。仲がいいからって言っただけだもの、おじいさんだって」
「だからきょうだい?」
「きょうだい、そんなに嫌?」
「気に食わねぇ」

 そう? と不思議がるアリーシアは道路を走っていくタクシーを振り返り、そのさなか目にした浜辺を見つめた。午後に白む視界のなか、どこか遠いタイヤの走行音や鳥の羽ばたきは彼女の声を押し流していく。

 数歩遅れた後ろ姿は、やはり俺とはまるきり違っていた。人混みに紛れそうな身長も――この町にいる理由も。

 こちらは単に待機命令に渋々従っている。こうするほかにやることがないからだ。アリーシアは、その気になればどこにでも行けるというのに好き好んでここにいた。一兵卒が抜けることをわざわざ咎めるような軍ではないだろうに。

 このまま宇宙に行けば死がすぐそこまで迫ってくるというのに。

 アリーシアもそんなことはわかりきっているはずで、だが笑い声とともに返ってきたのは明後日の方向からの見当違い。

「いいじゃない。これから何があってもずっといっしょだよ、きょうだいなら」

 辞令や時勢に引き離されることはあっても。アリーシアは多分、そういうことをいっている。

 だが。

 ――ぐるぐると考え込んでいたのがそれこそ馬鹿らしく、かつ別の意味で問題だった。何も、ひたすら、かけらたりともわかっていない人間の発言はこうも脱力を招くものなのか。いっそ感心したくもなる。

 一矢報いたくもなる。

「あー、そうかよガキ」
「えぇ……」
「能天気、楽観的、刹那的」
「め、めちゃくちゃ言う。オルガは何がそんなに嫌なの?」
「あぁ、嫌だね」

 早足でついてきたのを振り返ると、突然目が合ったアリーシアはあわてて立ち止まった。ホテルとカフェのちょうど境目、互いの通用口と化した狭い路地裏の入口がすぐそばになる。

 車が行き交う道路へ飛び込みでもしなければ、アリーシアは三方向を塞がれた形だ。

「お前みたいなのが妹だ? 面倒見る側の立場にもなれよ、心底めんどくせぇ」
「オルガが弟って線もあるでしょ」
「ない」

 そこは全プライドをかけて守りたい一線。

「そんなぁ」
「……ま、お前がきょうだいだって思ってるだけならいいけどな。アリーシア」

 そこは譲ってやってもよかった。アリーシアはただ俺たちとの間に、兵士としてのつながり以外の何かがあると嬉しいだけ。わかりやすく、きょうだいという形を挙げただけ。

 俺たちの側がどう思っているかを知りもせず。

「これから先、兄貴に何されても泣き言ぬかすなよ」

 忠告めかしたことばの意味がわからないのか、アリーシアはただ困ったように黙り込んだ。ここが往来でなければすぐにでも実例を見せてやったというのに、運がいいのか悪いのか。