「長い話、嫌いなんだよ」
それは十頁ほどの物語にも当てはまる。以前オルガの持ちものから適当に気まぐれに取り出したペーパーバックを、数分とたたずに放り出していたから(もちろん怒られていた)。
「文字を読むの、苦手?」
「というか、それも嫌い。つまんねーじゃん」
オルガもシアもよく飽きないな、とシャニが覗き込むのはわたしの後ろから。ふっと首を傾げているらしい理由がなんとなくわかって、浮かんでしまう笑みを手のひらで軽く隠した。
「あれ……本じゃない」
「絵本だよ」
「ガキのころのものまだ持ってんの」
「好きなんだもの、いくつかね。読みやすくていいよ、挿絵があって短くて」
正確には、子どものころに読んだような童話をたくさんまとめた全集。小さいけれど厚くて、見た目よりは重みがある。まるで宝箱のようなお気に入りを、彼はまじまじとながめていた。めくりもせず、ただソファーへ仰向けに寝転がりながら。
やがて。
「……これ、貸して。コクピットに持ってく」
指差す形は、すぐに手のひらをこちらに向けた。
取り上げる手から、受け取る手に。
「シアが言うならまあまあ読めるだろ、多分」
「いいよ、シャニに預けるね」
「ん」
ぱたんと本を閉じたのと同時に、待機室の外から複数の足音が目立ち始める。そろそろ巡回の交代のタイミングだ。
「……長い話はさ」
だらりとした寝姿のまま、シャニは逆さまにその光景を流し見して。
「キリが悪いよな。だらだら続いて最後まで読めなかったら気持ち悪い」
「だから、コクピットなんだ」
「そう」
平然と頷く様子に、ほんの少しいじわるな気分になる。
「やっぱりやめた。毎回読みに来てよ」
ランダム単語ガチャ No.4099「悪あがき」
