青騎士団主催の合同訓練当日に寝坊した、理由はそれだけだった。慌ただしく着替えその他諸々の身支度を整え、髪型を決めるのも煩わしく自室を飛び出したところで彼と出くわす。
「あぁ、起きていたのか。迎えに来たぞ」
「ありがとうー……ごめんなさい、手間かけて」
「いや、いいんだ。ちょうどマクシミリアン殿との手合わせが終わったところだ」
にこりとマイクロトフが笑うと朝日が差したようにまぶしい。こうして隣を歩き始める数歩だけで完全に目が覚めていきそうな心地。
それにしても、城内早起きランキング上位を誇るふたりがぶつかり合った……見てみたかったかも。ちなみにふたりの他にはヤマモト夫妻、ゲンゲン隊長、ワカバちゃんが食い込んでくる。わたしは下の下の方。
「何だそのランキングは……」
「リッチモンドさんとエミリアさんの共同調査だそうです。データ提供にヒルダさん」
「いやに本格的だな……それなら信用できる。リシュはその中でもっと上を目指すべきだ」
「えぇ……だって今日はともかく非番の日はぐっすり寝てたいじゃない」
「部屋の外から聞こえたが、その」
らしくなくマイクロトフはことばを濁す。目線が右へ、上へ、そうしてわたしへ帰ってくるまでそれなりにかかった。
「急いで準備をしてくれたのだろう? 部屋の外からいろいろと音が聞こえた」
「聞こえてたの!?」
「あぁ今リシュは大慌てしているんだな、とわかるくらいに」
「……恥ずかしい……」
「それも、そのためだろう」
微笑んで、指先は自分の後頭部を示す。いつも短く切り揃えた黒髪と同じ場所、わたしの後頭部にはポニーテールがあった。編んでねじって上げて……と練習していた髪型は今日ばかりは諦めて。
「そうそう。もっと時間かけて可愛くしたかったのに」
「今日の髪型も爽やかでいいと思うぞ」
武道場の入口へ一直線に進む足取りは淀みない。
対するわたしは立ち止まり取り残されていた。あまりにもすんなりと紡がれたことば。本人にはその認識がないとしても、わたしにとってはどこをどう見ても褒めことばだ。
「ね、ねぇマイクロトフ……」
振り向く瞳を見つめるのにここまで勇気がいるのは初めてだった。
可愛いかどうか、聞いてみても大丈夫かな。
ランダム単語ガチャ No.3721「ポニーテール」
