「この前従姉と歩いてたらね、商店街のおじさんたちがみんなして奥さん、奥さんって呼び込みしてきたの。何でかな」
「指輪を目印にしたんじゃないの」
「あ、そっかぁ」
立ち並ぶお店の通りがかりにまたしてもお嬢ちゃん、と呼ばれたのは夕暮れの帰り道も中盤に差しかかったころ。先週の謎が解けてさっぱりしたのと同時にキョーヤはワイシャツの襟元を整えた。静かな視線は隣を歩くわたしの右手に落とされて。
「商売柄、いろいろと見えるんだろうね」
従姉の白くて綺麗な手を思い出す。華奢なフォルムも戴かれたきらきらの宝石も、たおやかな指を一層魅力的に演出していた。マグカップを手に取る仕草ひとつもお姫さまがするように優雅に見えるなんて魔法のよう。
「わたしも将来つけてみたいなぁ。ね、キョーヤはどんなのが似合うと思う?」
「何か、花がついてるやつ」
そういう、と指し示されたのは鞄につけたクマのマスコット。綿でふくふくの両手に抱えられたクローバーはデフォルメがかって丸々と可愛らしい。夕日の沈みかけた空へ自分の右手をかざして言われた通りの指輪を想像してみる――うん、とってもいい。
「そっか、こういうのかぁ」
「君はどう思うの」
「すっごく可愛い! 世界一わたしにぴったりかも」
「君が言うなら間違いないだろうね。そのことば忘れないでよ。僕も忘れない」
――深く頷くキョーヤからは何かしらの確信めいた自信を感じる。話が読めずに足を止めてしまったわたしをよそに、大きな手が手を包んでいった。手の甲に優しい体温が重なる。
「右と左、どっちの指に着けたいの」
「……どの指に、とは聞かないんだ?」
「必要ないよ。君の指はどれも僕のものだ」
とんでもないことを口にして、手を引いて行くでもなくじっとわたしを見つめる。笑みを含んだ、楽しそうな唇とともに。
「でも、いちばんに指輪をあげたい場所は決まってる。知りたいかい」
