「見慣れない色だ」
声に出したのが間違いだった。部屋の姿見から振り返った彼女の表情が立ちどころに華やぐ。
「よくぞ聞いてくれました」
「聞いてない」
「これは試着です、久しぶりの休暇の装いですよ」
「聞いてない」
切り捨てつつも視線は追った。軍靴はハイヒールに、ネクタイはリボンに。ドレスの裾を整える指さえ優美に映える。
「明日だったね。誰かと出かけるの」
「これから誘うんです。来てもらえるといいですけど」
ほんの少し不安げな、けれど期待に満ちた目。
誰かに憧れるその輝きが、ずっと見ていたくなるほど綺麗だった。これからその目が見つめるのだろう何者かへ嫉妬さえ覚えるほどに。
「……その相手のためにお洒落をがんばるんだろう。叶うといいね」
「はい!」
真昼の太陽そのものの笑顔で、彼女は頷いた。
「ところで長官、明日の午後から空いてましたよね?」
