アイデアをすぐ試す学生の鑑

※順平の言ったとおりにすると全文が読めます。

 

「僕と澱月で編み出した新必殺技があるんだ。数秒だけこのまま待ってて、動かないで……それ!」
「あれ? 順平くんが急に消えちゃった!」

 部屋を見回しても、声だけがある。

 

「わっ」
「ひゃっ」

 探していた順平くんは、予想に反して真後ろから突然現れた。いたずらっぽく微笑みながら、その指は澱月がいるらしい中空を示して。

「びっくりした? 澱月で光の屈折率をあれこれして光学迷彩みたいにしてみたんだ」
「すごいね、メタルギアみたい」
「これなら安全に藍さんを隠してあげられるよ」

 どうやって? そう聞くと、伸ばされた両腕がわたしを包んだ。抱き寄せられて、ふたりの距離がゼロになったところへふわりと降りるのは一瞬の風。

「今、澱月が広がって僕たちを覆ってるんだ」

 蛍光灯を見上げる目は、真剣に考えている。

「相手は呪霊だけじゃないからね。危ないことがあったらこうしていっしょにやり過ごそう」
「ふたりで、いてくれるの?」
「藍さんひとりだと心配だからね」
「……うん。心細くなっちゃう」

 シャツ越しの肩に、額を押し当てた。

 このタイミングで誰かが部屋を訪ねてきても、わたしたちがこうしていることに気づくことはないのだろう。そうとわかっていても、何だかスリルめいたシチュエーションにどきどきしてしまって。

 いちばんの理由は、わたしを抱くしっかりとした腕だけど。

「ありがとう、守ってくれて」
 見上げると一気に電灯の光が差してほんの少しくらりとする。

 だから、見間違いかもしれない。小さく頷いた順平くんの頬がとても赤かったことは。

「……自分でやっておいてなんだけど、とても近いねこれ……」

 ――見間違いではないかもしれない。