こんなに長くグリンヒルを離れたのは久しぶりということ、あんなにも心が躍ったのは初めてということ、だからこそ最高のプレゼントを作ろうとしていること。
窯の前で焼き上がりを待ちながら、ニナはたくさんのことを教えてくれた。エプロンを外すのも後回しにして、本当にたくさん。
「リシュ、今回は徹底的に巻き込むわよ!」
「もちろん、どんとこいだよ」
大きく頷いて、お皿をテーブルに並べ始める。日頃お世話になっているひとたちへ、元気になってほしいひとたちへ――それと、気になるあのひとへ届けるために。
共助の一環として、手違いで入ってきた予定外の小麦を買い上げたと聞いたニナの行動は早かった。そこそこ日持ちがして、かつそれ以上手を加えずに食べられるクッキーを大量生産して食糧にする。とは半ば建前で、その半分を城内に配るイベントを企画して即日認可を取ってしまった。
「こんなときだから賑やかなもよおしも必要だって、許してくれたの!」
シュウさん、バーバラさん、ハイ・ヨーさん、リオウありがとう。ふたりの即興、感謝の歌はめちゃくちゃで、それが余計におかしくてくすぐったい。ひとたび戦線から外れると、待っているのはこの温かい時間だった。そう思うと香ばしい香りも、よく跳ねる歌声も愛おしい。
中でもニナは一際輝いて見えた。
「ニナはすごいね。行動力も発想も……」
学園でいっしょだったときからそうだった。留学して間もないわたしと友だちになってくれた。テレーズさんの事情を知るなり協力を決めた。それこそ、この軍に参加するところまでも迷いなく。
「なーにセンパイ、改まって? 私はいつも全力投球よ! フリックさんにもね!」
眩しくなるほどの笑顔、それが次いで口にしたのは「リシュは?」のひとことで。
「え、わたし?」
「用意したでしょ、あーんなに可愛いラッピング! で、で? 誰に渡すの? 本命は?」
「な、な、ないしょ……」
「ずるいわよ! 私だって教えたのに!」
「ニナは普段からオープンにしてるでしょー!」
小麦で白くなった手に捕まりそうになって、慌ててテーブルの周りを逃げ回った。奥で後片づけを終えていた女の子たちが不思議がって覗き込んでくるほどに、お腹の底から笑い合って。
「もう、ほんとはちゃんと渡せる自信ないんでしょ」
さらりと言い当てて、ニナはテーブルから身を乗り出した。額どうしがくっつきそうなくらい近く。
「わたしたちが作って、リシュが渡すのよ? 喜んでくれるに決まってるわ」
勝ち気な、燃えるような瞳。
見る者みんなを勇気づける熱があると、本当に思った。その証拠に、わたしはすぐに頷いてしまったのだから。
