きみのせい

 同じこたつに入った彼女は軽く伸びをした。この家に持ち込んだまま置きっぱなしのぬいぐるみはどこかで見たことのある丸い鳥。それを抱きしめてくつろぐ姿はもう慣れたものだ。

「おかえり」
「ただいま。これだよ、朝に言ってたやつ」
「ありがとう。いい香りだね」

 彼女の家にお歳暮としてたくさん届いたという茶葉で淹れてくれた二杯が、お盆の上で湯気を立てている。僕が用意した茶菓子と並べれば準備は終わり。

「わー、ありがとう! いただきまーす」

 一度も食べたことがないという彼女に振る舞った羽二重餅はとろけそうに細められた目のまま頬張られる。向かいからでもほのかな甘みを感じる、円い笑みで。

 結構な空腹をいっとき忘れるほどには、幸せそうな表情に見入った。ひとかけらも口にできていない僕のことを知ってか知らずか彼女はふと僕と目を合わせ、にこりと微笑んだ。

「おいしいね」

 ――そうだね、と返すだけで続きはことばにならなかった。伸ばした脚ではなく胸の辺りから上ってくる熱が喉を渇かせたように思えて、目の前の湯呑みを小さく傾ける。

 頬が、熱い。

 無言でこたつから出た僕を彼女はきょとんと見やるばかり。まだ察してはいないらしい。
 
「いいの?」
「……暑くなってきた」
「あらら。お茶が効いたのかも?」

 この状況が誰のせいなのか思い知らせる必要は――ないだろう。ふたつめの餅をあげたくなる、可愛らしく染まった頬をした彼女はのんきに首を傾げた。