また、ブラウスの袖口を濡らして。
「今日ね、お父さんもお母さんも帰ってこられないんだって。仕事があんまり大変だから」
そう、とだけ返し、窓の向こうで未だ晴れない雨空を見上げた。薄暗い中、隣で俯く彼女の表情もあちらと同じ温度をしている。
「オムライスのお店に行くって言ってたのに……それに、雨だし……」
ここに来るまで、涙をこらえていたのだろうか。
僕にはきっと、一生わからないことだった。周りを取り巻くもの全てに裏切られる日があるなどと確信する想像力は、彼女の領分だ。いっそ明確な敵がいたなら話は簡単に片づいている。僕が倒せばいいのだから。
「……君は、ひとりにした途端にばらばらになりそうだ。だから帰ろう」
レシピも晴れ乞いも知らない。
「キョーヤ、ずっといっしょにいてくれるの……?」
「今の君だけでは帰せないからね。返事は」
両手は、顔を上げた彼女に向けてのみ意味を持つ。
