甘える
二度見したのはわたしだけではないはず。隙なんて滅多に見せない風紀委員長、その頭にひょこりと跳ねるのは明らかに寝癖だった。「今日はお寝坊さんだったの?」「君と同じにしないでくれる」「んまぁひと聞きの悪い」 お願い通りに屈んでくれたキョーヤの…
RE!ワンライ:雲雀雲雀
またね
肩で息をする彼女は風紀委員にセーフをもらってほっと笑みを見せていた。遅刻未遂の自覚はあるようで、乱れた襟を整えながら急ぎ足で校舎を目指す。 彼からは死角で気づかれなかったらしいがこちらからは遠目にもわかった。大振りの花飾りがこの季節にふさ…
RE!ワンライ:雲雀雲雀
生意気
可愛い、可愛いと、いい加減聞き飽きた。「まさか、まさかキョーヤが、まさか……」「うるさいよ」 額を弾いてやろうかと伸ばした指があっさり避けられるのは想定内。彼女は両腕に抱いた――というより抱きすくめたクマのぬいぐるみを離さない。 ほんの気…
RE!ワンライ:雲雀雲雀
雨宿り
雨音にかき消されかけた微かな声に気づき小走りにたどる。公園のベンチを覆う申し訳程度の屋根の下に体をねじ込んだ途端さらに激しく降り始めたのを彼女は気にもとめずに足元に放った学生鞄の持ち手をたぐった。「わぁ、キョーヤ濡れたねー」「君は平気そう…
RE!ワンライ:雲雀雲雀
嫉妬
縫い目、綿の詰め具合、やっと納得のいく出来になった。「ぬいぐるみが綻んだ」 それだけのこと、とキョーヤは呆れたりしない。小さな頃からわたしとずっといっしょにいる友だちだと知っているからだ。「涙目で玄関に出てくるから何かと思ったよ。その子か…
RE!ワンライ:雲雀雲雀
あーん
その指に摘まれるのは兎のりんご。結構な自信作なのにこんな指摘が飛んできた。「どれも左耳だけ大きいね」「……畑で西日に当たりすぎたんだよ」「そう」 深く突っ込まれないのは情けをかけられているのかもしれない。それにしても応接机を挟んでふたりで…
RE!ワンライ:雲雀雲雀
特別
「まだあんまりお腹空いてないから、スープにする」 返事はしても、視線はショーウィンドウの向こうに引き寄せられる。キラキラしたハイヒール、ひらひらしたスカート、それを完璧に着こなすのはすらりと背の高いマネキンだった。多少の段差はあれど、多分わ…
RE!ワンライ:雲雀雲雀
らしくない
ソファーに横になったまま動けなくなっているのを初めて見た。眠たいのでも暇なのでもなく、発熱で。「保健室行こうよ」「ここでいい」「わかるけど……」 座面からはみ出たつま先は微動だにしない。脱いだ学ランを上掛けがわりに両手をお腹の上で組んで、…
RE!ワンライ:雲雀雲雀
おうちデート
夕焼け空が少しずつ陰るころ、通りには子どものさわめく声が遠ざかっていった。ベッドから起き上がって窓を開けると、魔女や狼男……のころころと小さいのが列になって商店街へ歩いていく。少し後ろを、懐中電灯を持った大人が三人。 毎年恒例、町内会のハ…
RE!ワンライ:雲雀雲雀
赤い糸
「運命の相手とは、赤い糸で手の小指どうしが結ばれてるんだって」「知ってるよ。こっちの方が確実なのにね」「物騒すぎる、しまってしまって」 どこから出したのか、というか何で持っているのかやたら棘のある手錠をキョーヤが渋々片づける。確かに、糸は確…
RE!ワンライ:雲雀雲雀
お揃い
お湯で取れるマニキュアがあると教えたときから、キョーヤは興味津々にわたしの指先を眺めることが増えた。「これも胡粉ネイルなの」「うん。風紀委員長的にはどうかな」「休日なら何も問題ない。だから僕にも」 そうやって差し出された両手、その指先を彩…
RE!ワンライ:雲雀雲雀
約束
壁のカレンダーに丸をつけるのを、隣からの視線が追う。「嘘つきは針千本飲むんだってね」「そこでロールちゃんを見ないで……」 ぷるぷる震えるハリネズミをその手から引き取ると不満げな視線が返ってきた。「君が何考えてるかわかるよ」「状況が状況だか…
RE!ワンライ:雲雀雲雀