「キョーヤが大好き」
みどりはそのひとことをくれたのと同じ口で春もみかんも映画も大好きと言う。
「君の大好きに序列はあるの」
「ないよ。全部好き」
ためらいがちに背中に寄りかかってくる温度に嘘はない。それでも気分が晴れないのは「いちばん」という前置きがないからなのか。
「みどり」
「うん」
「好きだよ」
何度伝えてもこのことばの重みが薄れるとは思わない。それはみどりがはにかんでありがとうと返す声がいつでも聞けるからだ。
「うん。好き」
みどりの声で紡がれる「好き」は特別な響きがする。ずっと舌の上で転がしていたい甘さと、手のひらで触れていたい温もりがある。それこそ何度耳をくすぐっていっても足りないほど。
だから排他的になどなれない。正直に伝えてはいけないことだ。「僕だけのものになって」と、いちばんの願いは。
ランダム単語ガチャ No.3500「難攻不落」
