「真冬だよ」
そのことばに「それなのにどうしてアイスを頼んだの」が隠されているのがありありとわかるのが嬉しい。カフェの一番奥、午後の日差しが入ってこないこの席だととくにそう感じるのは仕方ない。としてもアイスコーヒーじゃないといけない理由があった。
「ウィンナーコーヒーはね、ホットだとすぐにクリームが溶けちゃうの」
「溶かして飲むものでしょ」
「そうなんだけど、形があるままのをスプーンで掬って食べるのがおいしいんだよ。ほんの少しコーヒーの味」
「……甘い」
「砂糖五本目に突入したキョーヤに言われるのはちょっと……」
さらさらと落ちるグラニュー糖、かちゃかちゃとかき混ぜるスプーン。お店の控えめなBGMに重なる軽やかな音が耳に心地よくて、しばらく深い色の水面を眺めていた。ここにフレッシュを入れたらきっと綺麗なうずまきになる。
「でも、みどりがそんな顔するなら相当おいしいんだろうね」
「そんなって?」
顔を上げると、緩く細められた目がある。口をつけようとしていたカップの向こう側の唇は笑みの形。
「鏡でも見てきたらいい」
意地悪に答えを教えてくれない声はほんの微かに弾んで。
――この席に窓がなくて、今飲んでいるのがアイスコーヒーで、本当によかったと思う。
ランダム単語ガチャ No.923「アイスコーヒー」
