radio(not)kiss

 
「こう、発電エレキテルと真空雷管を組み合わせてです」
「うんうん」
「こう……録音機的なアイテムが作れないかなって……」
「うーん……?」

 空気の振動が必要な音の道具に「真空」を持ち込んでいいのかどうか悩むところ。ノルンの構想はさっきから行ったり来たり、しっちゃかめっちゃかだけれど、「録音機」の話はとても興味深い。

「誰かが話したことばを貯めておいて、好きなときに聞ける機械なんです」

 なんて聞いたときにはびっくりしたけど、『グンナル先輩のとらんしいばあ』という存在を知ってしまった僕たちにとって、それは手の届かない妄想なんかじゃなかった。

「もし完成したら、色んなことに使えるね。サルファの鳴き声を、ノルンが毎朝聞けるようになったり」
「あ〜……いいですね! 絶対、寝覚めがよくなります」

 巻き込むな、と傍らのサルファがにゃあとひと鳴き。

「毎朝……そうだなぁ、僕はノルンの声も聞きたいな」

 何とはなしに言ってみる。

「ノルンにおはよう、って言ってもらうのが好きなんだ。いつでも聞けたら嬉しいよ」

 その瞬間を思い浮かべただけで、心が温かくなる気がした。ノルンがそう言って笑いかけてくれるのが、目の前にありありと描き出せる。

 対して、目の前に突っ立っているノルンはといえば、目を丸くして参考書をめくる手を止めて――おまけに顔を赤くして、ひたすらこっちを見つめていた。

「ノルン?」
「あ……えっと」

 ぱっと目をそらされる。

「ありがとう……?」

 弱々しいことばがひとつ、返ってくる。

「うん……?」

 思わず、サルファを見下ろす。やれやれと言いたげに首を振ると、真昼の日差しが注ぐ窓辺に向かって大きくジャンプして、外へ出ていってしまった。本当に、人間みたい。

「……」

 ノルンに視線を戻す。ちょうど、彼女が頬に両手を当てて真後ろを向いてしまったところだった。

 それはまるで、頬の熱をどうにかしようとしているように見えた。

「……ぁ」

 数秒後、僕はそれとまったく同じ仕草をすることになった。

 もしかして今、僕はとんでもなく恥ずかしいことを言ったんじゃないかな……?