胸ポケットから丸い目の羊が顔を覗かせる、なんともみどりによく似合うデザイン。真冬用を持ってきたと張り切って着替えたパジャマは、見た目にも柔らかな淡いピンクをしている。もともとふんわりとしている彼女のシルエットをさらに円くするのは、楽しそうな笑顔。ここに泊まりに来る日はいつもこんな顔をする。お風呂から出たばかりの頬はほんのり色づいて。
「かわいいでしょ」
「かわいい。それに、もこもこしてるね」
「触るともっともこもこだよ」
ほら、と差し出される手はほとんど袖に隠れている。ベッドに腰かけるみどりの隣へ落ち着きそれに触れると、確かにほっと力の抜けるようなふくふくの肌ざわりがあった。
「……本当だ」
「でしょ」
腕へ、肩へ、背中へ。指先でたどる先すべて。そのまま両腕のなかに抱きとめるとくすくす笑う声が耳に心地よく届いて。みどりがクマを抱くときはいつもこんな気持ちなのかもしれない。手放しがたくて、こうしているだけで満たされるような気さえしてくる温かさ。
「みどりのパジャマはどれも気持ちいい」
「……キョーヤにこうしてほしいなって」
軽くうつむいて、額を僕の胸元にうずめる仕草。こんなことができるくらいみどりはすっぽりと収まっている。
「だから、わたしの冬パジャマってぜんぶふわふわなんだ」
「へぇ。ぜんぶ」
「うん。ぜんぶ」
――見上げる目と、見下ろす目があった。
ぴたりとかち合った視線はたぶん、言いたいことと受け入れたいこと、言われることと受け入れられることを互いに読んでいる。
ちょうど三秒。期待にきらめくみどりの瞳に映る自分をまともに見ていられた時間だ。
彼女の企てまたは挑発に乗せられる側だというのに、僕は心底楽しそうな顔をしているから。
「……明日も来て」
それから視線を外したのを悟られないように、引き寄せた毛布をみどりにぱさりとかぶせた。追撃がわりにベッドへ引き倒してやると少し仕返しできた気分になるが、はしゃいで笑うのをちゃんと見られないのだけが残念だ。
「まったく、どこで覚えたんだろう。そんな悪だくみ」
そう言う唇はほころんでいる気がする。今日は安眠できそうだ。
ランダム単語ガチャ No.6761「共謀罪」
